令和5年(2023年)4月27日施行 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律

令和5年(2023年)4月27日施行 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律

令和5年(2023年)4月27日施行 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律

相続土地国庫帰属制度の概要

 

社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地が増加しています。
そこで、相続又は遺贈により土地の所有権又は共有持分を取得した方が、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる制度が始まりました。

 

当事務所にも以下のような相談を頻繁に受けます。

 

「田舎にある誰も住んでいない土地を手放したい。」
「別荘を持っているが高齢になって管理できない。」

 

こういった方は固定資産税の負担だったり子世代に迷惑をかけたくないとの理由で来所されることが多いです。

 

売却や市町村への寄付が可能な土地であれば処分は簡単ですが、実際には難しい事例になることが多いです。

 

 

 

相続放棄(民法第915条)との関係

 

相続人は相続放棄をすることで、親等の被相続人の資産や負債を承継することはなくなります。

 

一方で民法239条第2項で、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」としています。つまり、不動産を相続する権利のある相続人の全員が、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をすると、その不動産は国の所有へと移るのです。

 

しかし、相続放棄をしても不動産の管理責任は残ります。

 

第940条
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

 

管理責任まで免除されるには次順位の相続人に引き継いでもらうか、相続財産管理人を選任する必要があります。
自身が相続放棄するような魅力のない不動産を次順位の相続人に任せるのは抵抗があるでしょうし、相続財産管理人を選任するには費用が係ります。

 

相続放棄を行うと相続人ではなくなりますので、親の預貯金は相続するけど土地は相続しないといったことはもちろんできません。

 

 

相続土地国庫帰属制度の対象

 

対象は取得原因が「相続」又は「遺贈」の場合で、「土地」の所有権又は共有持分を取得した方です。

 

 

対象となる土地は相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の第2条と第5条に規定されています。
要約すると以下に該当しない土地が対象となります。

 

@ 建物の存する土地。
A 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地。
B 道路その他の他人による使用が予定されてる土地。
C 土壌汚染対策法第2条1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地。
D 境界が明らかでない土地、所有権の帰属又は範囲について争いがある土地。
E 崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要する土地。
F 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有害物が地上に存する土地。
G 除却しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地。
H 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地。
I @からHに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地。