配偶者短期居住権(民法1037条)と配偶者居住権(民法1028条)
配偶者短期居住権
配偶者が被相続人の建物に無償で住んでいたときは、相続発生後も一定期間無償で住み続けることができるようになります。
配偶者短期居住権発生の要件は次のとおりです。
『相続開始の時に被相続人が所有又は共有していた建物に無償で居住していた配偶者』
居住権の存続期間は遺産分割の場合とそれ以外で異なります。
遺産分割・・・遺産分割成立時と相続開始から6カ月経過時のいずれか遅い方まで
遺産分割以外・・・建物所有者からの配偶者短期居住権消滅の申し入れから6カ月経過する日まで
対象・・・相続開始のときに建物の一部に居住していたときは、建物全部ではなく、居住部分にのみ成立します。
登記はしません。
居住している期間の通常の必要費は配偶者が負担します。
遺産分割での取り扱い・・・配偶者の取得財産には含まれません。税法上も配偶者の取得財産として相続財産に計上しません。
配偶者居住権
配偶者居住権とは相続開始したときに被相続人の所有していた住居に住んでいた配偶者が、引き続き当該住居に住むことができる権利のことです。
配偶者居住権は被相続人が有していた所有権を『配偶者居住権(居住する権利)』と『配偶者居住負担付所有権』に分離をして、別々の人が相続することを認める仕組みです。
配偶者居住権設定の方法は以下の3つです。
1.遺産分割
2.遺贈
3.死因贈与
遺贈は遺言によって行うことになりますが、配偶者居住権を遺言で設定する場合には特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)によっては配偶者居住権を取得させることは出来ないとされています。
対象・・・被相続人単独所有又は被相続人と配偶者との共有にかかる建物全部です。相続開始のときに配偶者が建物の一部に居住していても配偶者居住権は建物全部に及びます。(これは配偶者短期居住権と異なる。)
期間・・・設定された期間(配偶者の終身も可能)有効ですが更新はできません。
登記・・・共同申請で設定登記を行います。
通常の必要費は配偶者が負担します。
遺産分割での取り扱い・・・配偶者の取得財産に含まれます。税法上も配偶者の取得財産として計上します。