

成年後見制度・遺言制度を大きく見直す民法改正
令和8年(2026年)6月17日、「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月24日に公布されました。
今回の改正では、成年後見制度について、現在の「後見・保佐・補助」の仕組みが大きく見直されるほか、遺言制度についても、自筆証書遺言などの押印要件の見直しや、新しい「保管証書遺言」の創設などが行われます。
ただし、2026年8月現在、これらの改正はまだ全面的に施行されていません。
改正内容によって施行時期が異なるため、現在は従来の制度が適用されています。
成年後見制度は「後見・保佐・補助」から補助制度へ一元化されます
現在の成年後見制度では、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」という3つの類型が設けられています。
今回の改正では、成年の法定後見制度における「後見」と「保佐」が廃止され、原則として「補助」の制度へ一元化されます。
これまでのように判断能力の程度によって大きく3つに区分するのではなく、本人にどのような支援が必要なのかを個別に判断し、必要な範囲で補助人に代理権などを与える制度へと変更されます。
本人の自己決定をできる限り尊重しながら、必要な部分について支援することを重視した制度になります。
必要な範囲だけ成年後見制度を利用できるようになります
現行の成年後見制度では、例えば相続手続きや不動産の売却など、特定の手続きを行うために成年後見制度を利用した場合でも、その手続きが終了したという理由だけで成年後見を終了することは原則としてできません。
今回の改正では、本人の判断能力が回復していなくても、補助による保護の必要性がなくなった場合には、家庭裁判所が補助に関する審判を取り消すことができるようになります。
そのため、相続手続きなど特定の目的のために制度を利用し、その必要がなくなれば終了させるという、本人の状況に応じた柔軟な利用が可能になります。
判断能力を欠く状態にある方については「特定補助」の制度が設けられます
判断能力を欠くことが通常の状態となっている方についても、新しい補助制度の対象となります。
このような場合には、本人が行った一定の重要な法律行為を取り消すことができる仕組みや、本人の財産を保護するための権限を持つ「特定補助人」を付する制度が設けられます。
本人を保護する必要性が高い場合には十分な保護を行いながら、必要以上に本人の権限を制限しない仕組みとなります。
補助人が本人の死亡後に行うことのできる事務も整備されます
補助を受けていた本人が亡くなった場合について、補助人が行うことのできる死後の事務についても規定が整備されます。
必要がある場合には、家庭裁判所の許可を得て、本人の火葬または埋葬に関する契約を締結することができるようになります。
また、相続人が相続財産を管理できるようになるまでの間、一定の範囲で、相続財産の保存に必要な行為や、弁済期が到来している債務の支払いなどを行うことができるようになります。
ただし、補助人が本人の死亡後の事務を無制限に行うことができるわけではなく、法律で定められた範囲や家庭裁判所の許可などの要件があります。
任意後見制度についても見直しが行われます
任意後見とは、本人の判断能力が十分なうちに、将来判断能力が低下した場合に自分を支援してもらう人や、その人に任せる事務についてあらかじめ契約しておく制度です。
現在の任意後見制度では、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することによって任意後見契約の効力が生じます。
改正後は、家庭裁判所が「任意後見監督人による監督の必要がないことが明らかである」と認める場合には、任意後見監督人を選任せず、家庭裁判所が直接任意後見人を監督することができるようになります。
また、本人が補助開始の審判を受けた場合に任意後見契約が終了するという現在の規定も削除されます。
自筆証書遺言などの押印が法定要件ではなくなります
遺言制度についても大きな見直しが行われます。
現在、自筆証書遺言を作成する場合には、遺言者が遺言書に署名するとともに押印することが必要です。
改正法の施行後は、自筆証書遺言などについて押印が法定の要件ではなくなります。
自筆証書遺言では、遺言書本文を自書するという基本的な要件は残りますが、押印については任意となります。
なお、この改正はまだ施行されていません。
施行されるまでは従来どおり、現行法に従って遺言書を作成する必要があります。
パソコン等を利用して作成できる「保管証書遺言」が創設されます
今回の改正では、普通の方式の遺言として、新たに「保管証書遺言」が創設されます。
保管証書遺言では、従来の自筆証書遺言とは異なり、電磁的記録などを利用して遺言の内容を作成することができます。
遺言者は、一定の方式に従って作成した遺言について、遺言書保管官の前で遺言の全文を口述するなどの手続きを行い、法務局で保管してもらうことになります。
単に自宅のパソコンで遺言書を作成して保存しておけば遺言として有効になるという制度ではありません。
法律で定められた方式に従い、法務局で保管されることが効力発生のために必要となります。
現在の自筆証書遺言書保管制度とは別の制度です
現在も、法務局には「自筆証書遺言書保管制度」があります。
これは、自分で自書した自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度です。
今回新設される「保管証書遺言」は、これとは別の新しい遺言方式です。
保管証書遺言では、電磁的記録などを利用して作成することができるため、遺言制度のデジタル化という点でも大きな改正となります。
死亡の危急に迫った場合の遺言についても新しい方式が設けられます
病気や事故などによって死亡の危急に迫った人が行う特別方式の遺言についても見直しが行われます。
一定の要件のもとで、遺言する状況を録音・録画によって記録する方式などが新たに認められます。
オンラインによって証人を立ち会わせることができる場合も設けられるなど、デジタル技術を利用した遺言方法が追加されます。
改正法の施行時期は内容によって異なります
今回の改正法は、令和8年(2026年)6月24日に公布されましたが、すべての制度が同じ日に施行されるわけではありません。
成年後見制度の見直しについては、公布の日から2年6か月を超えない範囲内で、政令で定める日に施行されます。
遺言制度のうち、自筆証書遺言などの押印要件の見直しについては、公布の日から1年を超えない範囲内で、政令で定める日に施行されます。
新しい保管証書遺言など、システム改修を必要とする制度については、公布の日から3年を超えない範囲内で、政令で定める日に施行されます。
2026年8月現在、具体的な施行日はまだ決まっていません。
現在は従来の成年後見制度・遺言制度が適用されています
改正法はすでに成立・公布されていますが、施行前の制度については、現在の法律に従う必要があります。
例えば、自筆証書遺言について「押印が不要になる」という改正が決まったからといって、現在すでに押印なしで遺言書を作成してよいということではありません。
実際に遺言書を作成する場合や成年後見制度を利用する場合には、その時点で施行されている法律を確認する必要があります。
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今回の法改正についても、今後具体的な施行日や詳細な運用が決まり次第、最新の内容に基づいて対応いたします。
※本ページは2026年8月20日現在の法令及び公表資料に基づいて作成しています。改正法の具体的な施行日や詳細な手続きについては、今後、政令・省令等によって定められる内容があります。